論文・要旨でできること
論文や要旨は、学会や論文誌が決めた書き方の決まり(執筆要項)に沿って書く文書です。
chaff は、表記の揺れ、無い図への参照、句読点の混ざりを機械で見つけます。
style: に執筆要項の名前を書くと、その決まりのとおりに見ます。ジャンルは academic/paper です。
論文でよく起きること
論文は、共著者が節を分けて書き、最後に一つにまとめます。そのとき、書き方が混ざります。
| 崩れ | 例 |
|---|---|
| カタカナ語の語末の「ー」が揺れる | 「サーバー」と「サーバ」が、一つの論文に混ざる |
| 執筆要項と違う書き方 | 語末の「ー」を省く決まりなのに、「コンピューター」と書いた |
| 句点が混ざる | 「.」で書く論文に、貼り付けた段落の「。」が残る |
| 無い図を指す | 図を 1 枚にまとめたのに、本文が「図 3 に示す」のまま |
どれも、査読者が最初に気づく所です。中身の前に、読み手の信頼を減らします。
chaff が見ること、見ないこと
このジャンルで見る主なルールは、次のとおりです。どれも既定で動きます。
| ルール | 見つけるもの |
|---|---|
katakana-long-vowel | 「サーバー」と「サーバ」の混ざり。style: を書くと、決まりと違う書き方 |
kutoten-consistency | 「、。」と「,.」の混ざり |
dangling-figure-reference | 文書に無い図・表を指す所 |
quote-without-source | 人の言葉として引いたのに、段落に参照が無い引用 |
見ないことも決めてあります。
- 中身が正しいか、結論が実験から言えるかは見ません。読んで決めるのは、書いた人と査読者です。
- 参考文献の書き方が執筆要項どおりかは見ません。
- 「、。」と「,.」のどちらが正しいかは決めません。一つの論文の中で少ないほうを指摘します。
- 学術のジャンルでは、受け身や逃げの表現のルールは動きません。論文では、それが決まった書き方だからです。
かけてみる
準備がまだなら、先に準備するを済ませます。次の要旨と本文の一部を ronbun.md という名前で保存しました。このページのために書いたものです。
# 会議室予約の待ち時間を減らす割り当て方式
## 要旨
本稿では,会議室の予約が集中する時間帯に,空き室を先に割り当てる方式を提案する.社内の予約サーバーの記録 3 か月分を用いて評価した結果,予約の待ち時間は平均 42 秒から 18 秒に減った.提案方式は,既存のサーバの設定を変えずに導入できる.
## 1. はじめに
会議室の予約は,朝の 9 時台に集中する.この時間帯には,同じ部屋に予約が重なり,利用者は空き室を探し直すことになる.本稿の方式は,図 1 に示すように,予約を受けた時点で空き室を割り当てる。

## 2. 評価
評価には,2026 年 6 月から 8 月までの記録を用いた.結果を図 3 に示す.待ち時間は,すべての時間帯で短くなった.
## 3. おわりに
本稿では,空き室を先に割り当てる方式を提案し,待ち時間が減ることを示した.今後は,コンピューターの台数が多い大きな会議室での評価を行う.
まず、執筆要項を決めずにかけます。--compact は、1 件を 2 行にまとめて出す印です。
$ npx chaffjs ronbun.md --genre academic/paper --compact
ronbun.md academic/paper · 日本語 ジャンルは --genre から
5:106 warning 「サーバ」と「サーバー」が混ざっています(この語は 2 回のうち 1 回が「サーバ」)
katakana-long-vowel
9:96 warning 句点を「。」と書いています(この文書はふつう「.」。11 箇所のうち 1 箇所が違う)
kutoten-consistency
15:35 warning 「図 3」を指していますが、この文書に図 3がありません
dangling-figure-reference
指摘 3 件、動いていない rule 81 件
執筆要項を決めないと、chaff は「サーバー」と「サーバ」のどちらが正しいかを決めません。混ざっていることだけを指摘します。「コンピューター」は一度しか出てこないので、混ざりになりません。
執筆要項の名前を書く
電子情報通信学会(IEICE)の論文では、3 音以上のカタカナ語は語末の「ー」を省きます。論文と同じフォルダに、次の chaff.yaml を置きます。
genre: academic/paper
language: ja
style: ieice
genre を書いたので、--genre は要らなくなります。かけ直します。
$ npx chaffjs ronbun.md --compact
ronbun.md academic/paper · 日本語 ジャンルは chaff.yaml から
5:46 warning 「サーバー」は語末の「ー」を省いて「サーバ」と書きます(3 音以上の語)
katakana-long-vowel
9:96 warning 句点を「。」と書いています(この文書はふつう「.」。11 箇所のうち 1 箇所が違う)
kutoten-consistency
15:35 warning 「図 3」を指していますが、この文書に図 3がありません
dangling-figure-reference
19:42 warning 「コンピューター」は語末の「ー」を省いて「コンピュータ」と書きます(3 音以上の語)
katakana-long-vowel
指摘 4 件、動いていない rule 81 件
今度は、決まりと違う「サーバー」と「コンピューター」を、それぞれ指摘します。選べる執筆要項の名前と、決まりの出典は、チームの表記ルールを決める にあります。
最初に出る指針
ジャンルを決めると、chaff は結果の最初にそのジャンルの指針を出します。よい論文が満たすことを、原稿を確かめる問いの形で並べたものです。その下に、このジャンルで特に効く rule の名前が 1 行で出ます。
問いの多くはルールでは確かめられないので、指摘より先に読みます。 AI に書き直させるときも、AI は同じ指針に沿って書きます(AI にジャンルの指針を渡す)。
$ npx chaffjs ronbun.md --genre academic/paper
指針: 論文(academic/paper)
下の指摘より先に、原稿がこれを満たしているかを確かめてください。
- 要旨だけで、問い・方法・結果・結論が分かり、決められた長さに収まっているか
- 引用が参考文献の一覧と一対一で対応し、引用の書き方が一つにそろっているか
- 図表が参照の順に番号付けされ、本文の数字と図表の数字が一致しているか
- 主張の強さが結果に見合っているか(示した・示唆する、を使い分けているか)
このジャンルで特に効く rule: abstract-length, citation-reference-mismatch, citation-style-mix, figure-reference-order, quote-without-source
chaff.yaml の guide: で書き換えられます。出さないときは --no-guide。
════════════════════════════════════════════════════════════
ronbun.md academic/paper · 日本語 ジャンルは --genre から
…
パスや内容から推測したジャンルと、既定のジャンルでは、指針を出しません。違う種類の文書の指針は、かえって読み手を迷わせるためです。
--compact と --no-guide でも出しません。指針の文は、チームが chaff.yaml の guide: で書き換えられます(ジャンルの指針を変える)。
指摘の意味と直しかた
| 行 | 指摘 | 意味 | 直しかた |
|---|---|---|---|
| 5 | katakana-long-vowel | IEICE の決まりでは、「サーバー」は「サーバ」と書きます | 「予約サーバ」に直します |
| 9 | kutoten-consistency | この論文は句点を「.」で書いているのに、ここだけ「。」です | 「割り当てる.」に直します |
| 15 | dangling-figure-reference | 図 3 がありません。図は図 1 だけです | 評価の結果の図を足して番号を振るか、参照を正しい図に直します |
| 19 | katakana-long-vowel | IEICE の決まりでは、「コンピューター」は「コンピュータ」と書きます | 「コンピュータ」に直します |
文化庁の「外来語の表記」に沿うなら、style: bunkacho にします。今度は、語末の「ー」を付ける向きで見ます。
意味を読む検査は無い
このジャンルでは、npx chaffjs test で AI に送る箇所はありません。
npx chaffjs test ronbun.md --dry-run で確かめると、送る箇所は 0 箇所と出ます。結論が実験から言えるかは、書いた人と査読者が読んで決めます。
chaff.yaml の始め方
論文を置くフォルダに、上の 3 行の chaff.yaml を置けば始められます。
chaff.yaml に書けることの全体は設定にあります。学会ごとの細かい決まり(「下さい」ではなく「ください」など)は、custom_rules: で足せます。書き方は チームの表記ルールを決める にあります。
次に読むページ
- 執筆要項を chaff の設定にする方法は、チームの表記ルールを決める にあります。
- ルールごとの説明は、リファレンス にあります。
- ほかの種類は、文書の種類ごとにできること に戻って選びます。